「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2023 beyond」は、毎年秋に神戸・六甲山上で開催される現代アートの芸術祭です。山の上までのアクセス、服装やおすすめスポットまで、芸術祭の作品を効率的かつ満足に鑑賞する方法をお伝えします。
1. 「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」とは?
神戸・六甲山上にある9つの施設を舞台に展示されるアート作品を、ハイキング気分で周遊しながら楽しむ現代アートの芸術祭です。
2010年からこれまでに、延べ470組以上のアーティストが参加しました。 2023年、14回目の開催にあたり、「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」として新しく生まれ変わりました。今年のテーマは、「表現の向こう側(にあるもの) Beyond Representation」です。多様性をもつ世界との密接な繋がりから逃れられない時代を生きる私たちは、異なる価値観や文化、方法論に出会ったときにどのような態度をとることができるのかを問われています。 既存の価値観にとらわれず新しい価値観の提示や再解釈を通じて、社会との接続や共生を試みる表現者各位の作品とその先にあるものに目をむける芸術祭を目指しています。
会期 :2023年8月26日(土)~11月23日(木・祝)
開催時間 : 10:00-17:00 (会場により一部異なる)
*会期中無休。
ただし六甲山サイレンスリゾートのみ8月~10月の毎週月曜休業(月曜・祝日の場合は火曜に振替休日)
今年からの大きな変更は2つです。
1つ目は、ROKKO森の音ミュージアムの中庭に新しく野外エリアを拡張しました。期間限定のイベントですが、彫刻4点は、会期終了後も3年間展示されます。ROKKO森の音ミュージアムは、冬の間もオープンするので、雪や雨など様々な状況の作品が楽しめるでしょう。
2つ目は、トレイルエリアの新設です。7つの作品をエリア内に点在して設置しています。森に囲まれた別荘エリアを通るため、古き良き六甲山の雰囲気を感じることができます。
2. 六甲山へのアクセスとお得なチケット
六甲山は、神戸三宮からも、大阪梅田からも、アクセスが便利です。阪急電鉄六甲駅、JR六甲道駅、阪神電気鉄道御影駅のいずれかで降り、駅前から神戸市バス「16」系統または「106」系統に乗り、六甲山の玄関口「六甲ケーブル下」駅へ。六甲ケーブルで山上まではわずか10分です。
六甲ケーブル下の駅では、作品鑑賞パスポートやお得な乗車券を購入できます。
作品鑑賞パスポートを購入すると、4つの有料施設(ROKKO森の音ミュージアム・六甲高山植物園・風の教会エリア・トレイルエリア)に各施設でチケットを買うよりもお得に入場ができます。作品鑑賞パスポートは、山上駅でも購入可能です。トレイルエリアの作品は単館券がなく、作品鑑賞パスポート以外では入場ができませんのでご注意ください。
●大人(中学生以上)3,000円
●小人(4歳~小学生)1,200円
9月23日(土)~11月23日(木・祝)の土日祝は、ROKKO森の音ミュージアムと六甲高山植物園で「ひかりの森~夜の芸術散歩~」というライトアップイベントが開催されます。ナイトパス付は料金が異なります。
●大人(中学生以上)4,000円
●小人(4歳~小学生)1,700円
また、乗車券でおすすめしたいのが、六甲ケーブルと六甲山上バスの乗車券がセットになった表六甲周遊乗車券です。各施設を周るためバスの乗り降りが多くなりますので、こちらのチケットを買っておけば、小銭不要で何度も乗り降りができ、料金もとってもお得です。六甲ケーブル下駅でしか購入できませんので、買い忘れがないように気を付けましょう。
●大人(中学生以上)1,500円
●小人(4歳~小学生)750円
六甲ケーブル下駅では、菅原 陸「となりにいてあげる」が展示されています。時間に余裕をもって行き、チンパンジーと一緒に写真を撮りましょう。
六甲山の近くには「日本三名泉」の1つ、有馬温泉がありますので、六甲山訪問の前後に温泉観光を組み込む行程がおすすめです。アクセスには、会場の1つである「六甲有馬ロープウェー」が利用できます。
3. 六甲山上の施設の周り方
山上の各施設をつなぐ「六甲山上バス」が運行しています。バスの時刻表は各バス停のほか、現地で配布されているMAPにも記載があります。本数が多くないエリアもありますので、バスの時刻をチェックして滞在時間を決めることをおすすめします。バスの時間を考えるのが大変だという方は、モデルコースを参考に周ってみてください。
山上バスはICカードの利用ができません。小銭が必要となりますので、面倒だなという方は「六甲山上バス1DAYチケット」の購入をおすすめします。六甲ケーブル山上駅で購入が可能です。
●大人(中学生以上)500円
●小人(4歳~小学生)250円
4. おすすめの服装と持ち物
六甲山上は麓より約5度涼しいです。暑い8月から9月上旬は大丈夫ですが、9月中旬以降は羽織ものを1枚持っていると安心ですし、山の天候は変わりやすいため、脱ぎ着しやすい服装をおすすめします。
また、トレイルエリアは林道を歩き、各施設内も坂道や歩きづらい道が一部ありますので、スニーカー等の歩きやすいお靴でお越しください。かばんも両手を開けることができるリュック等が楽です。
5. 各エリアのおすすめ作品と所要時間
(1) 六甲ケーブル (六甲ケーブル下駅・山上駅・天覧台)
山上駅について出迎えてくれるのが、轟木 麻左臣「ピエロ、ルーレット」です。強烈な違和感を私たちに感じさせる作品です。
また、六甲山上駅の上にある展覧台から見る六甲山から見下ろす神戸の街並みは素晴らしいので、お見逃しなく。また、併設されるTENRAN CAFEでは、六甲味噌を使った六甲みそグルメとして、「六甲味噌キャラメルソースと六甲山麓ミルクジャムをかけた濃厚ソフトクリーム」が提供されています。さくさくしたナッツがアクセントになって美味しいです。
鑑賞時間の目安:20~30分
(2) 兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)
「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」に公募で出品された作品は、開幕前日の8月25日に表彰が行われます。今年のグランプリは、五月女かおる「食事の風景」です。網でつくられた5頭の牛は、本当に食事をしているようにみえますね。裏から顔をだして、牛の中に入り、牛の気持ちになってみてくださいと五月女かおるさんがおっしゃっていました。
※アーティストがいる時間に限り、近づいて写真を撮ることができます。
鑑賞時間の目安:15~20分
(3) 六甲山サイレンスリゾート(旧六甲山ホテル)
作品が展示されているのは、本館から道を隔てたレストラン「空のダイニング」の店内です。作品鑑賞のみの入店も可能ですが、せっかくの機会ですので、作品がある空間でお食事をとるのもおすすめです。
鑑賞時間の目安:10分
(4) ROKKO森の音ミュージアム
ROKKO森の音ミュージアムの野外エリアにでてすぐ目に留まるのが、コニシ ユウゴ(たま製作所)「Moon Plants」です。ここに生まれた植物の想定で作られたという作品の1番の魅力は、中の空間を自身で体感することだそうです。ぜひ、皆さんも中に入って体感して感じてください。こちらの作品は、蛍光塗料を練り込んだ素材で作っているので、夜は発光してとても美しいです。
こちらの作品は、三梨 伸「石舞台に立つドリアン王女」です。作品の下に敷かれている石畳は、阪神電鉄の線路の敷石で作られています。閉幕後も敷石の舞台は残される予定で、ドリアン王女がいなくなった後、どのように活用されていくのか長く楽しみな作品です。
このほか、ミュージアム内を点在するように作品があり、ハンモックエリアやツリーハウス等、作品以外にも六甲山の自然を楽しめる場所がたくさんあります。
ミュージアム内にある森のCaféでは、「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」のラベルがついたレモネードが販売されています。六甲山の天然水を使ったレモネード は、暑い日にぴったりのすっきりとした味わいです。
鑑賞時間の目安:90~120分
単館券:大人1,500円、小人750円
(5) 六甲高山植物園
園内を少し進み池の真ん中あたりに見えてくるのが、北浦 和也「Picnic on Circle Circus」です。六甲山にゆくりある3つ「山上駅展望台にあったキジのモニュメント」「高山植物園の小便小僧」「六甲山美化協力会看板のキャラクター」をモチーフとしています。初めて訪れる方は、高山植物園の小便小僧を探してみてください。
こちらは柴田 まお「Camouflage Print」です。六甲山にあるブナの木をイメージし、あえてデジタル印刷でブナの葉っぱの実寸を印刷しています。六甲山の自然に溶け込むように作成されたということですが、今後、色づいてくる六甲山の中で作品はどのように存在していくのか楽しみだと柴田さんがお話しされていました。
加藤 美紗「溢れる」です。透明度が高くて強度の高い水のブロック約700個を使った作品です。天気や時間で全く印象が変化しますので、時間を変えて何度も訪れても楽しいです。また、ブロックに映りこむ人や景色も観察してみてください。
鑑賞時間の目安:60~90分
単館券:大人900円、小人450円
(6) トレイルエリア
新設されたトレイルエリアは、徒歩で作品を見ながら歩いていくエリアです。六甲ケーブル山上駅から、またはROKKO森の音ミュージアムから歩きます。途中、急な坂道もありますので、足に自信がない方はご注意ください。公式では120分とでていますが、鑑賞は最短で60分ほどあれば可能です。
中崎 透「Sunny Day Light/ハルとテル」は、戦前から六甲山に残る古い山荘を活かし、この山荘を避暑地として訪れていたハルとテルの二人にまつわる物語をめぐる巡回型のインスタレーションです。
鑑賞時間の目安:60~120分
単館券:なし
(7) 風の教会エリア
絶対に見逃したくない作品の1つが、安藤忠雄建築 「風の教会」で展開される椿 昇「Daisy Bell」です。「風の教会」は、建築家安藤忠雄氏が設計を手がけた「水の教会」「光の教会」と並ぶ「教会三部作」の一つに数えられる教会です。
建物までのアプローチが素敵です。
教会の建物の中には、大きな空気の彫刻が設置されています。その大きさや空気が生み出す動きに圧倒されます。デイジーの花をつけたゴリラがモチーフ。世界で初めてコンピューターが歌った歌とされている「Daisy Bell」をタイトルに引用したこの作品で、椿は「テクノロジーの手先として暴走するホモサピエンスへの根源的な疑問」を提示したという。
彫刻を押しのけて奥へ奥へと歩いていくことができます。
他、近くにある六甲山芸術センターでは7作品の鑑賞ができます。
鑑賞時間の目安:90~120分
(8) 六甲ガーデンテラスエリア
六甲ガーデンテラスエリアは、レストランが3つ、フードテラスが1つあり、昼食やお土産の買い物にも便利な拠点となっています。神戸だけでなく、大阪まで見渡す眺望が魅力の見晴らしのテラスに展示されているのは、武田 真佳「case」です。中は空洞になっているので、「case」という名前がついています。
作品鑑賞パスポートからは外れますが、自然体感展望台六甲枝垂れ「シダレミュージアム」も、ぜひ訪れていただきたいスポットです。
自然体感展望台六甲枝垂れ「シダレミュージアム」
●大人(中学生以上)1,000円
●小人(4歳~小学生)500円
エリアのあちこちに点在しているのは、ノセレーナ「ピョンコス」です。写真と景色の違和感や不可解な感覚は、他の人と共有することで、日常に対しての新しい発見やアイディアを生み出すそうです。ぜひ作品を見て不思議だなと感じたことを、お近くの方と話してみてください。
鑑賞時間の目安:30分
(9) 六甲有馬ロープウェー六甲山頂駅
六甲ガーデンテラスエリアから歩いて、約5分ほどの場所にあるのが六甲有馬ロープウェー六甲山頂駅です。
1階に展示されているのは、土屋 さやか「ひらがなサーカス」です。「思わずマネしたくなるような人文字ひらがな46ポーズ」をコンセプトに制作されています。
2階に展示されているのは、わにぶち みき「Beyond the FUKEI」です。風景画の抽象化をコンセプトにしていて、離れてみると単なるドットのようにみえますが、近づいてみると手作業の跡や物のリアルな感じが伝わってきます。SNSやインターネットで発達した便利な世の中ですが、よく見て考えてほしいという問題提起をしているそうです。
鑑賞時間の目安:15~20分
6. 食事場所のおすすめ
(1) TENRAN CAFE
六甲ケーブル 山上駅からすぐ、「天覧台」にある山の上のくつろぎカフェです。眼下に広がる神戸や大阪の街並みを眺めながら、地元の食材を使ったお食事がいただけます。おすすめのメニューは、「やまみつカレー」です。マイルドなカレーに季節の野菜を使ったオリジナルカレーで、ルーにあと掛けで六甲山のはちみつ(やまみつ)を使っています。
(2) 六甲山サイレンスリゾート 空のダイニング
大阪と神戸を一望できるダイニングです。ランチはコースが中心となりますので、ゆっくりとお時間がとれる方におすすめします。また、20時まで(最終入店時間は19時)営業をしていますので、観光後の夕食としても利用可能です。
(3) ROKKO森の音ミュージアム 森のCafé
ROKKO森の音ミュージアム内にあるカフェで、セミセルフ式のワンプレートランチやカフェメニューを提供しています。お外にも席がありますので、天気の良い日はテラス席で食べると気持ちが良いです。
他に、園内には360度透明の「SIKIドーム」を貸切でご利用いただけるランチ付きの予約プランもあります。ROKKO森の音ミュージアムでゆっくりと過ごしたい方にはおすすめのプランです。
(4) 六甲高山植物園 カフェエーデルワイス
六甲高山植物園には、出入口が2か所あり、カフェエーデルワイスは東口の近くにあります。植物園の木々を見下ろせるテラス席がおすすめです。
(5) 六甲ガーデンテラスエリア 六甲ビューパレス
セミセルフ形式レストランで、カレーライスやハンバーグ、シチューなどのカジュアルな洋食メニューが楽しめます。窓際のお席からは、神戸の街並みを見下ろすことができます。
(6) 六甲ガーデンテラスエリア 六甲フードテラス
うどんやラーメンだけでなく、ご当地グルメのやまみつカレーパン、六甲味噌だんごなどが揃う小腹が空いた時にぴったりのフードコートです。屋外のテラス席で食事ができます。
(7) 六甲ガーデンテラスエリア 六甲山ジンギスカンパレス
日本人の方は、六甲山といえばジンギスカンという方も多いのではないでしょうか。古くからの六甲山名物です。ジンギスカンを食べながら、山からの景色を満喫しましょう。
(8) 六甲ガーデンテラスエリア グラニットカフェ
旬の食材を使ったシェフ特製の料理やスイーツを提供するカフェです。こちらも眺望はばっちりです。
食事ができる場所は多くはありませんので、土日祝のお昼時はいずれのレストランも混雑しています。時間をずらしたり、テイクアウトを利用したりして、上手に食事をとりましょう。
7. モデルルート
最後に、バスの乗り継ぎを考えるのが大変、行ってみたいけどアクセスがネックという方のために、山上のモデルルートをご案内します。
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六甲山上駅(10:35発)
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記念碑台(10:38着/10:58発)
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六甲ガーデンテラス(11:04着/12:55発)
ランチもこちらで済ませましょう。
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高山植物園(12:57着/13:17発)
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ミュージアム前(13:18着/14:58発)
お疲れの方は、Caféやハンモックでゆっくり過ごすのもおすすめです。
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六甲山上駅(15:00着)
美しい六甲山の自然とともに楽しめる秋だけのイベントです。作品は毎年変わりますので、ぜひ毎年の秋のイベントとして訪れてみてください。