立派な天守閣、どっしりとした石垣、金箔貼りの装飾……などなど。日本独自の様式を備えた魅力的なお城が関西には多数。世界遺産から”日本のマチュピチュ”と呼ばれるお城、近年復活したばかりのお城まで、建築物としても、歴史や文化を知る資料館としても楽しめる関西のお城をご紹介します。
1.【大阪】天下統一の象徴「大阪城天守閣」
日本三大名城の一つであり、大阪のランドマーク的存在の「大阪城天守閣」。天下統一を果たした豊臣秀吉の拠点として知られている、波乱万丈な歴史を持つお城です。
戦国時代、大きな力を誇っていた浄土真宗の本願寺派・蓮如が建立した石山本願寺が大阪城の前身です。そこへ織田信長が攻め入り、長年の交戦を経て織田氏のものに。同氏の死後、豊臣氏によって15年もの月日をかけて完成。豊臣家滅亡後は徳川家の直轄地となり、増築・再建がなされました。つまり、戦国三英傑の手に渡り、その都度進化してきた数奇なお城なのです。
明治維新の動乱によってお城の大部分が焼失してしまいましたが、1931年に天守閣が復興され、現在の姿は豊臣時代・徳川時代に続く3代目。現存する遺構はほとんどが徳川時代のものですが、天守閣は大阪の繁栄の礎を築いた豊臣秀吉時代のものをモデルにしているのだそう。高さは約55メートルと大スケール。金のしゃちほこや虎、鶴などの装飾があしらわれ、“派手好き”として知られる豊臣氏らしい豪華な外観が特徴的です。
建物内は、豊臣秀吉や大阪城にまつわる資料が展示された歴史博物館となっています。「大坂夏の陣図屏風」を映像やミニチュア模型で解説するコーナーに、四方金箔貼りの部屋「黄金の茶室」、兜や陣羽織の試着コーナーなど、見ごたえたっぷり。
1階にはミュージアムショップが入っているので、記念品やお土産はぜひこちらで。
最上階の8階は展望台となっていて、眼下に広がる大阪城公園や大阪の街並みを一望することができます。
天守閣を見て回った後は、大阪城内堀を周遊する黄金の御座船でちょっとした船旅を体験してみるのもおすすめ!
豊臣秀吉が“日本一の城”を目指して建てたと言われる大阪城。栄華を誇った同氏の半生を追体験するように、天下人の気分を味わってみては?
LOCATION INFORMATION
住所
大阪市中央区大阪城1-1
アクセス
大阪メトロ谷町線・中央線「谷町4丁目駅」から徒歩約17分
2.【京都】徳川家の栄枯盛衰を見守ってきた「元離宮二条城」
徳川幕府最後の将軍・徳川慶喜が大政奉還の意思の表明をした場所として知られる「元離宮二条城(以下、二条城)」。徳川幕府初代将軍・徳川家康によって、天皇の住む京都御所の守護と将軍上洛の際の宿泊所として築かれ、約260年続いた徳川家の繁栄と終焉を語る上で欠かせない場所となっています。1994年には世界文化遺産に登録されました。
城内に多数ある重要文化財や国宝指定の建築物の中でも、一番の見どころは「二の丸御殿」。武家書院造の代表例で、玄関にあたる車寄から奥へと6つの棟が連なり、徳川家の威厳を示すような構造となっています。部屋数は33室、総畳数は800畳にも及ぶという大きな建物です。
特に、将軍と大名や公卿衆が公式に対面する「大広間」は御殿内で最も格式が高く、二重折上格天井や狩野探幽による障壁画など豪華な装飾が施されています。
「二の丸御殿」の室内を飾る約3,600面の障壁画は、日本美術史上最大とされる狩野派によるもの。徳川家の威厳を表す役割を果たしていたようで、巨大な松や獰猛そうな虎などが描かれたダイナミックな絵面に、圧倒された訪問者も当時多かったかもしれませんね。
「二の丸御殿」の正門「唐門」。極彩色の彫刻で埋め尽くされ、霊獣に加え鶴や亀、松・竹・梅の長寿や繁栄など徳川家の財力を誇示するかのような絢爛華麗な装飾に圧倒されるはずです。
「清流園」は、芝生を敷いた洋風庭園と、「池泉回遊式庭園」と言われる和風庭園で構成された和洋折衷の庭園となっています。
格式高い建築様式や煌びやかな装飾。徳川家の栄華の跡が残るこのお城で、歴史に想いを馳せてみては?
3.【兵庫】日本が誇る美しき白亜の名城、世界文化遺産「姫路城」
大小4つの天守閣と、白漆喰総塗籠の城壁。まるで翼を広げる白鷺の群れのように見えることから別名“白鷺城”と呼ばれている「姫路城」。「日本で最も美しいお城は?」と聞かれたら、真っ先に姫路城をイメージする人も多いはず。
その歴史は、鎌倉・南北朝時代に時の戦国武将・赤松則村が兵庫県の姫山に縄張りをしたことに始まります。以降、豊臣秀吉をはじめとした日本史上で名を馳せた武将たちによって修繕・増築が繰り返され、今の姿に。築城以来、大きな戦災を免れ、大天守や小天守、櫓(やぐら)など、建築物の大部分が現存していることから「不戦・不滅の城」とも言われています。1951年には天守閣が国宝に指定され、1993年には世界文化遺産に登録されました。
要塞機能の高さも同城の特徴の一つ。敵を惑わす曲がりくねった細い通路や、あちらこちらに設けられた鉄砲狭間・弓狭間など、広大な敷地内にはたくさんの防御の仕掛けが! 敵陣として潜入する感覚で城内を巡ってみるのも楽しいですよ。
どの角度から見ても美しく“八方正面”と称されている外観。
お城の全貌を離れたところから望むなら、城内の内堀周遊がおすすめ! 昔ながらの和船に揺られながら優美なお城を見上げる…なんてひとときも乙なもの。城主になった気分で優雅なクルージングタイムをお楽しみください。
冬には雪化粧したレアな姿を拝むことができるかも!
築城から400年以上経つ今もなお美しくそびえる姫路城。兵庫県を訪れた際は、日本が誇る才色兼備なお城を見に足を運んでみてくださいね。
4.【兵庫】雲海に現る天空の城「竹田城跡」
標高353.7メートルの山頂に佇む山城「竹田城跡」。現存するのは石垣のみですが、雲海に浮かぶフォトジェニックな姿を一目見ようと、日々多くの人が訪れる話題のスポットです。
室町時代、かの応仁の乱で名を轟かせた但馬の守護大名・山名宗全によって築城が開始されたと言われています。最後の城主・赤松広秀によって壮大な石垣が築かれた十数年後の1600年の関ヶ原の戦いで同氏が敗れたことで、石垣のみを残して廃城に。長らく歴史の中で沈黙していましたが、2000年代に各種メディアで紹介され、映画のロケ地となったことで脚光を浴び始めるようになりました。
江戸期以前の形がほぼそのままの状態で残っている巨大な石垣群は、大小の自然石を加工なしで積み上げる「野面積み」という技法でつくられています。石垣をつくったとされる石工集団・穴太衆(あのうしゅう)には「石の声を聴き、石の行きたいところへ置け」という教えが伝えられていたそうで、当時の職人技を思い知らされます。
9~12月にかけては昼と夜の寒暖差によって雲海が発生しやすく、濃い霧に包まれた竹田城を見ることができます。この世とは思えない神秘的な姿を目にすれば、“天空の城”と称されている理由がわかるはず。狙い時は明け方から朝8時頃。いくつかの自然条件が必要なので、雲海景色に出合えるかどうかは運次第!?
一番高い場所にある「天守台」に登り、向かって南側に広がる「南千畳」方面はぜひ写真におさめておきたい絶景ポイント。
山頂まで続く登山道は決して短くはありませんが、辿り着いた先には疲れを吹き飛ばす景色が待っているおすすめのスポットです。
LOCATION INFORMATION
住所
兵庫県朝来市和田山町竹田古城山169番地[MAP]
アクセス
JR播但線竹田駅から「天空バス」乗車20分
「竹田城跡」下車、徒歩約20分
JR播但線竹田駅から「天空バス」乗車10分
「山城の郷」下車、徒歩約40分
4.【兵庫】現代に復活を遂げた「尼崎城」
江戸時代初期、 “大坂の西の守り”として幕府の命で築かれた「尼崎城」。当時は尼崎のシンボルとして威容を誇っていましたが、明治時代に惜しまれつつ廃城。長い間姿を消していましたが、再建を望む声が多く寄せられ、地元の篤志家や市民の寄付によって2018年に天守閣が復興、2019年3月に一般公開されました。時を経て、再び蘇ったのです。
元々は3重の堀と4層の天守閣を持ち、敷地面積は甲子園球場の約3.5倍にもおよぶ巨大城郭でした。復興版は石垣を含めて高さ約24メートルと小さめではあるものの、外観は当時の姿を忠実に再現。新たな観光として、地元住民や観光客に親しまれています。
建物内は資料館になっています。2階の「尼崎城ゾーン」では、尼崎藩の歴史を解説したパネル展示、剣術や鉄砲体験ができる「侍道場」、槍・刀・弓矢・鉄砲の重さを体感できるコーナーがあります。
3階の「なりきり体験ゾーン」では武士やお姫様のコスチュームを着ることができるので、金のふすまをバックにぜひ記念撮影を!
また、最上階5階の「わがまち展望ゾーン」には江戸時代の城下町を映したタブレット端末が置かれているので、新旧の風景を比較しながら眺めるのも楽しいですよ。
悠久の時を経て再び姿を現した尼崎城でタイムスリップ気分を満喫してください。
日本の歴史や文化を知るうえで、お城は重要なスポット。きっと色々な発見があって、これまで知らなかった日本に触れることができること間違いなしです。今回ご紹介した5つのお城は、見どころも魅力もそれぞれ違うので、ぜひすべて巡ってみてくださいね!